コンビニでサントリーの天然水を買おうとすると、2Lサイズは税込100円、一方550mLサイズは税込108円で販売されています。
2Lサイズは4倍も容量が大きいのに、550mLサイズの方が安い、、
毎度不思議に思っていたのですが、じっくりと考えてみることにしました。
ペットボトル飲料の原価について
ボトル入りミネラルウォーターの原価といえば、原材料費・容器代・輸送費といったところでしょうか。
原料に関しては、採水地の土地さえ所有していれば水は汲み放題ですので、限りなく低いと考えられます。
容器に関して、Wikipediaでは「500mL用ペットボトル樹脂の原価は0.5円」、中部大学の武田邦彦氏によると「ボトル原価は10円程度」とのこと。樹脂の原価からみても、500mLだろうと2L容器だろうと原価に大差はないと考えられます。
物流費用は上記の画像から見ても大きな比重を占めているようです。しかしながら、自社物流網もありますし、ここでも500mLだろうと2L容器だろうとコストに大差はないでしょう。
つまるところ、どちらも原価に大差はないようです。
サントリーに尋ねてみました
サントリーお客様相談センターのフォームより、掲題の質問をしてみました。なんと2時間後には返信を頂くことができました。
サントリーお客様センターでございます。
日頃より弊社商品にご愛顧を賜り、心よりお礼申し上げます。このたびは「サントリーの天然水」の価格につきまして、
お問い合わせいただきありがとうございます。あいにく、価格につきましてはメーカーからの拘束力がないため
実際の販売価格はそれぞれの販売店で決定されております。メーカー希望小売価格(税別)は以下のとおりです。
■南アルプスの天然水550ml 130円
■南アルプスの天然水2L 230円ご参考になさっていただければ幸いです。
メーカーのサントリーとしては2Lの方が高く売りたいのが本音です。
価格表示について
ここでメーカー希望小売価格という言葉がでてきました。家電量販店に行くとオープン価格という言葉も聞きますし、定価という言葉もあります。それぞれどのように違うのでしょうか?
・希望小売価格: メーカーが小売店にこの位の価格で売って欲しいという思いが詰まった価格。拘束力はありません。
・オープン価格: 希望小売価格が設定されていないもの。小売店側で売価を設定します。
・定価: 予め定められた価格のこと。値引きができない本や新聞などは定価販売ですね。
それでは、希望小売価格とオープン価格はどちらが優先されるのでしょうか?
メーカーと小売店の力関係
日本では独特の商習慣を有し、江戸時代以来続く問屋制度が統廃合を繰り返しながらも今も残っています。問屋はメーカーと小売店の間を受け持ち、決済から注文の整理まで多様な機能を有していました。
そうした中で建値制という値付けが行われていました。メーカーが問屋や小売店へのマージンを見込んで販売価格を決定し、商流の中間地点での利益を確保し、価格競争が起こることを防ぐ制度です。しかしながら、建値は目安といえど、最終価格の決定権をメーカーが握ることになります。これは再販維持行為といって独占禁止法上の違法行為となります。そうした影響や、小売店の価格競争が進行するにつれて、建値制は形骸化することになりました。
簡単には説明出来ませんが、こうした背景も一因として、現在では小売店が市場の情勢に合わせて価格を決定するオープン価格が主流です。
つまり、値段の決め手は小売店側にあります。
2Lと500mLの値付け
それではコンビニにおいて、この値付けはどのように行われているのでしょうか。ここからは私の推論となります。
コンビニにおける売れ筋は500mlでしょう。一般に消費者がコンビニに求めるものは、外出先でのちょっとした買い物です。少し喉が渇いたから水を買おうと思い、安いからといって重い2Lの水を買うのは稀でしょう(私はよく買いますが、、)
その際のコンビニの主な競合は自動販売機なので、その辺りのpricing(110円程度)で消費者は迷うこと無く購入します。
一方2Lペットボトルはサイズや重さの影響もありますが、コンビニでは一番下目立たない棚に置いてあります。
なぜなら2Lサイズの主戦場はスーパーマーケットだからです。近所のチラシに目を通すと、時折2Lの水が68円などで大々的に宣伝されていることがあります。2Lサイズは主に家庭でストックして用いられるものなので、消費者はコンビニよりもスーパーでまとめ買いします。
スーパー側の熾烈な価格競争の結果、希望小売価格とはかけ離れた利益ギリギリのpricingをすることが多いようです。コンビニにおいてある100円の2Lペットボトルの水はコンビニでみると安いのですが、主戦場のスーパーと比較するとやや高いということになります。
まとめ
つまり、コンビニで2Lサイズの水が500mLサイズよりも安く売られているのは、
①そもそも消費者は500mlサイズ108円、2Lサイズ100円で売られていても利便性の観点から前者を購入する
②2Lサイズはスーパーマーケットで価格競争に陥り、そのpricingを引きずっている
といった要因が影響しているのではないでしょうか。
ふと「消費者はスターバックスで購入するのはコーヒーではなく、そこで過ごす時間に対価を払う」みたいなことを思いました。水の容量に応じて対価を払うというより、喉の渇きの解消に対して対価を払うといったところでしょうか。
日常の些細な事ですが、じっくりと考えてみると様々な背景があり面白いですね。
本当に安いミネラルウォーターを手に入れるならば、上述の激安2Lをヒーヒー言いながらケース買いが最安です。
しかしながら、子連れであったりご高齢であればそれも難しいですよね。
クリクラのようなウォーターサーバーを契約しておけば、コストは120円/L程度となりますが、重たい水の運搬から開放さ
れ、お湯がすぐ使える利便性など多くのメリットもあるので検討に値するでしょう。